プロダクトデザインとは?製品価値を創造するための総合的なプロセス
プロダクトデザインとは、製品の見た目を美しく整えるだけの仕事ではありません。
ユーザーの体験価値を最大化するために、機能性・感性・構造・製造性など多角的な要素を組み合わせて設計する、極めて知的で実践的な活動です。
今回の記事では、「プロダクトデザインとは何か?」という疑問に答えるべく、仕事の中身や他分野との違い、必要なスキルや実務の流れまで、初心者にも分かりやすく解説していきます。
目次
プロダクトデザインとは?
形状や素材だけでなくユーザー視点も重視される
プロダクトデザインとは、単に「製品の見た目を整える」作業ではありません。
それは製品の使いやすさ、機能、見た目、素材、さらには製品を通じて得られるユーザー体験までも設計する、総合的なデザイン活動です。現代では、見た目が美しいだけでは商品として成功することは難しく、ユーザーがどのようにその製品を使い、どんな満足感を得るのかが大きな価値となっています。
たとえば、スマートフォンを考えてみましょう。
スタイリッシュな外観はもちろん重要ですが、手に持ったときのフィット感、ボタンやインターフェースの操作性、通知の見やすさ、重さや滑りにくさなど、ユーザーが「触れる」あらゆる体験がプロダクトデザインの範疇に入ります。
このように、ユーザー視点で設計された製品こそが市場で選ばれるのです。
感性と機能性のバランスがプロダクトデザインの核心
また、プロダクトデザインには「感性」と「機能性」という、しばしば相反する要素を両立させるという重要な役割もあります。美しいデザインでも使いにくければ意味がなく、逆に機能だけを重視して無骨になってしまえば、消費者の心を動かすことはできません。
そのため、デザイナーは「使いやすさ」と「美しさ」のバランスを見極めながら設計を行います。感性的なアプローチでは、色彩や質感、フォルムが重要になり、機能性の面では、構造やパーツの配置、製造コストや耐久性なども考慮されます。どちらかに偏るのではなく、両立させてこそ真のプロダクトデザインと呼べるのです。
プロダクトデザインとは、製品の見た目や形状を考えるだけでなく、使う人の気持ちや環境、社会的な背景までを含めて考える「総合設計」なのです。
プロダクトデザイナーが果たす役割と必要とされるスキル
リサーチから試作まで一貫して関わる職種
プロダクトデザイナーの仕事は、単なるデザイン作業にとどまりません。製品の企画段階から市場に送り出すまで、幅広いプロセスに関わります。
最初に行うのはユーザーや市場のニーズを把握するリサーチです。どのような課題があり、どんな機能が求められているのかを調査・分析し、製品の方向性を定めます。
その後、コンセプトを立案し、スケッチや3Dモデルを通じてアイデアを可視化します。試作品を作成し、テストと改良を繰り返しながら、製品としての完成度を高めていきます。
このプロセスにおいては、エンジニア、マーケター、営業など多くの関係者と連携を取る必要があり、調整力やチームワークも非常に重要です。
コミュニケーション力と創造力の両立が重要
プロダクトデザイナーに求められるスキルは多岐にわたります。
まず必須なのが「創造力」です。新しいアイデアを形にし、まだ世の中にない製品を生み出す力は、プロダクトデザインにおいて中核となる要素です。さらに、視覚的な美しさと機能性を両立させる「デザイン思考」も欠かせません。
しかし、それだけでは不十分です。社内外の多くのステークホルダーと関わるためには、高い「コミュニケーション能力」が必要です。自分のアイデアを的確に伝え、相手の意見を理解し、最適な解決策を見出す対話力が求められます。
また、CADや3Dソフトの操作スキル、モックアップの制作スキル、製造工程に関する基礎知識など、テクニカルなスキルも必要です。
プロダクトデザイナーは「アイデアを生む人」であると同時に、「形にする人」でもあります。
創造力と実現力、そして多くの人と協働できる柔軟さを兼ね備えた存在こそが、現代において求められる理想的なプロダクトデザイナーと言えるでしょう。
プロダクトデザインとインダストリアルデザインの違い
目的とスコープの違いに着目した比較
プロダクトデザインとインダストリアルデザイン。この2つの言葉はよく似ていて、混同されがちですが、実は明確な違いがあります。
両者の違いを理解することは、製品開発やデザインの分野に関心がある人にとって非常に重要です。
プロダクトデザインは、主に消費者が直接使用する製品のデザインを指します。具体的には、スマートフォン、家電、家具、日用品などのユーザー体験に直結するアイテムが対象です。
ユーザーがどのように製品を使い、どのように感じるかという「体験」や「感情」に重点を置くのが特徴です。
一方、インダストリアルデザインは、より広範な産業製品を対象にしています。大量生産を前提とした工業製品全般が対象で、操作性やメンテナンス性、製造効率など、産業的な視点が強調されます。
つまり、プロダクトデザインが“人”を中心に据えているのに対して、インダストリアルデザインは“産業プロセス”や“生産効率”を重視しているといえます。
現代では境界が曖昧になってきている
とはいえ、現在ではこの2つの分野の境界はますます曖昧になっています。なぜなら、プロダクトデザイナーも製造コストや量産体制を考慮しなければならず、またインダストリアルデザイナーも最終的なユーザー体験にまで目を向ける必要があるからです。
たとえば、電気自動車のデザインでは、車体のフォルムや内装、操作インターフェースなど、プロダクトデザイン的な要素が多く含まれています。
しかし同時に、エンジンやバッテリー配置、製造ラインの最適化といったインダストリアルデザインの視点も欠かせません。つまり、実際のプロジェクトにおいては、両者が連携しながら設計を進めるケースが多く見られます。
両者の役割を理解することで、製品開発における視点を広げることができます。特にプロダクトデザインを学ぼうとする人にとって、インダストリアルデザインの基礎を知ることは、実践において大きな武器になるでしょう。
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実務におけるプロダクトデザインの流れとその現場

企画から試作までのステップを丁寧に踏む
プロダクトデザインの現場では、感覚的なひらめきだけでなく、明確なプロセスに基づいた設計が求められます。
まずは市場やユーザーのニーズを分析するリサーチから始まります。この段階では、ターゲット層の行動や好みを深掘りし、どのような課題を解決すべきかを明らかにします。
次に、得られた情報をもとにコンセプトを設計します。
ここでは、製品の使われ方や理想的な体験を言語化・視覚化し、それに基づいたスケッチや3Dモデルが作られます。
その後、設計案を実際の形に落とし込むための試作(プロトタイピング)が行われ、現物に近い状態で検証します。ユーザビリティテストや操作性の評価もこの段階で実施されます。
多職種連携が生むリアルな製品開発現場
プロダクトデザイナーは、アイデアを一人で形にするわけではありません。エンジニア、マーケティング担当者、製造担当者、経営層など、さまざまな関係者と密に連携しながらプロジェクトを進めます。
特に製品が量産段階に入ると、わずかな設計変更が大きなコスト増につながることもあるため、実務では「美しさ」と「実現性」の両方を見据えたバランス感覚が非常に重要になります。
また、納期や品質のプレッシャーの中でも創造性を維持する必要があるため、タフな判断力と柔軟な対応力が求められます。
プロダクトデザインの現場は、創造的であると同時に極めて現実的です。机上の空論ではなく、ユーザーの手に届く“本物”をつくるために、地に足のついたプロセスが日々実行されています。
プロダクトデザインを支える知識領域とその習得方法
基礎力としての造形知識とデザイン原則
プロダクトデザインには、見た目の美しさだけではなく、論理的な構造や機能性が求められます。そのため、まず必要になるのが「造形」に関する知識です。造形とは、製品の形や輪郭、バランスを構成する力であり、美しさだけでなく使いやすさにも直結します。
また、色彩設計やタイポグラフィなどのビジュアルデザインの基本も、プロダクトデザインに応用されます。視認性や心理的な印象を考慮した色の使い方や、ロゴや製品ラベルの見せ方など、細部の積み重ねがユーザー体験に大きな影響を与えます。
応用力としての人間工学・材料工学・製造知識
実際の製品づくりにおいては、理想だけでなく現実的な視点が不可欠です。
人間工学の知識を使えば、ユーザーが自然に使える形状を設計することができます。たとえば、持ちやすさや疲れにくさなど、身体的な負担を軽減する工夫は、製品の評価に直結します。
材料工学の知識も重要です。どの素材が軽くて強度があるか、熱に強いか、コストはどれほどかといった判断が求められます。
また、製造方法に関する理解があれば、実際に量産できる形状を見極めることができ、アイデアを現実に落とし込む力が高まります。
現場で学ぶことが多いが基礎学習も欠かせない
これらの知識は、すべて学校で完璧に学べるわけではありません。
実務を通して体感的に学ぶ部分も多くありますが、基本的な知識は事前に体系的に身につけておくことが非常に有効です。書籍や専門の講座、オンライン学習など、多様な手段で習得できます。
加えて、他の優れたデザインを観察・分析する力も養うべきです。
なぜその製品が美しく、使いやすく感じられるのかを考える視点が、デザイナーとしての成長に直結します。知識と実践のバランスが、プロとしての深みを生み出すのです。
まとめ
プロダクトデザインとは、単なる「見た目」を整える作業ではなく、製品そのものの価値を最大化するための創造的かつ論理的なプロセスです。ユーザーの行動や心理を理解し、それに最適化された製品を生み出すことで、使用体験の質を高める役割を担っています。
製品開発の現場では、デザイナーはリサーチから設計、試作、改善、製造連携に至るまで多岐にわたる工程に関与します。
そのため、感性だけでなく論理的思考力やコミュニケーション能力、製造知識や技術理解など、幅広いスキルが求められます。
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