UXの改善につながるKA法とは?調査手順や適した活用シーンを解説
プロダクト開発において、ユーザーが本当に求めているものを正確に把握することは極めて重要です。しかし、表面的な要望だけでは、真のニーズを捉えきれないことも少なくありません。
KA法は、ユーザー調査で得られた情報から、その背後にある本質的な価値観やニーズを段階的に抽出していく分析手法です。今回は、UX改善の現場で活用できるKA法の基本概念から実践手順、適した活用シーンまでを詳しく解説します。
目次
KA法とは

KA法は、インタビューや観察で得られた質的データから本質的なニーズを導き出す分析手法です。UXリサーチによく使われ、ユーザーの行動の背景にある感情や価値観を読み解く際に役立つといわれています。
考案者である浅田和実氏のイニシャルから名付けられ、データを構造化して“ユーザーが本当に求めていること”を浮き彫りにする点が特徴とされています。
関連記事:「UXリサーチとは?具体的な手順や質を高めるポイントを解説!」
KJ法との違い
KJ法とは、ブレインストーミングなどで集めた多くのアイデアを、カードとして書き出し、それらをグループ化しながら論理的に整理していく手法です。川喜田二郎氏のイニシャルが名称の由来です。
カード同士の関係性を見つけることで、新しい発想や問題解決の方向性を見出しやすくなります。
KA法もKJ法も、情報整理や情報分析のプロセスが必要な点では似ていますが、その目的や素材(参考にする情報)は異なります。
具体的には、KA法は本質的なニーズを明らかにするためにインタビューや観察から得た質的データを用いますが、KJ法は新しい発想や問題解決の方針を見出すためにブレインストーミングで出たアイデアを活用します。
KA法のメリット

ユーザー調査の結果をKA法で分析する主なメリットを以下に解説します。
ユーザーの本質的な価値を深く理解できる
KA法の最大の強みは、ユーザーの深層心理を可視化できることです。言葉には表れない潜在的なユーザー心理に迫ることができます。
また、ユーザーを中心に据えて分析が行われるため、企業側の解釈に偏らず、顧客視点での価値発見につながりやすい点も大きな特色です。
サービス改善や新しい体験の設計にも活かしやすく、幅広い示唆が得られるといわれています。
組織内の共通理解を促進する
チーム全体のユーザーへの理解を深められることも、KA法のメリットです。価値のつながりや構造が整理された形で提示されるため、メンバー全員が同じ視点でユーザーを理解できるようになり、議論がスムーズに進みます。
特に、根拠を明確に示せる点が優れています。主観がぶつかる場面でも認識が揃いやすく、「なぜこの機能が必要なのか」「なぜこの改善が優先されるべきか」といった判断の背景が透明化されます。
意思決定の精度を高められる
KA法ではユーザーの価値観や目的を深く理解するため、「何が根本的な課題なのか」「何が本当に大事なのか」など判断の拠り所を明確にできる点が魅力です。
何を優先すべきかが構造として整理されるため、意思決定の基準が明確になり、プロジェクト全体の方向性も定まりやすくなります。
UX改善へつながるKA法の手順

KA法がどのようにユーザー理解を深め、具体的なUX改善へ結びついていくのか、その流れを説明します。
KAカードでユーザーの要素を抽出する
最初のステップでは、ユーザーがどのような体験をしているのかを丁寧に拾い上げるために「KAカード」を作成します。具体的には、「出来事」「心の声」「価値」という三つの視点を書き込んでいきます。
出来事
インタビューの中で語られた行動や事実を、そのままの形で記述します。
例えば「ログインに時間がかかった」「目的の情報が見つからなかった」といった具体的な行動が該当します。
心の声
行動や出来事に対してユーザーが抱いている感情や考えを想像して記述します。表面的な発言の裏側にある本音や期待を読み取ることがポイントです。
例えば「もっと効率的に分析したい」「全体像を把握したい」といった心情が考えられます。
価値
心の声をさらに深掘りし、そこに潜む本質的な価値観やニーズを言語化します。ユーザーが本当に求めている「効率性」「安心感」「信頼できる情報」といった抽象度の高い価値がここに紐づけられます。
抽象化を繰り返す
次は、抽出した「価値」を抽象化していく作業です。
まず、近い意味を持つKAカードをグループ化し、そのグループに名前を付けます。この作業を繰り返し行い、小グループから中グループ、大グループへと段階的に抽象化していきます。
グループ化の際は、無理にまとめようとせず、関連性の深いものだけを集めることが重要です。
抽象化を段階的に重ねることによって、個々の発言の背後にある共通した目的や感情が浮かび上がり、ユーザー像がより立体的に捉えられるようになります。
可視化する
最後に、整理した価値同士のつながりを「価値マップ」として図式化します。グループ間の因果関係や対立関係を矢印などで表現することで、ユーザーの内面構造を一目で把握できるようにします。
例えば「確実性を求める価値」と「効率性を重視する価値」が時に相反することや、あるグループが別のグループの前提になっていることなどが視覚的に理解できるようになります。
この可視化によって、どの価値を強化すべきか、どこに改善の余地があるのかといった施策立案のヒントが生まれやすくなり、UX改善への道筋がよりクリアになります。
KA法とKJ法の適した利用シーン
KA法とKJ法は、どちらも情報整理やアイデア発想に役立ちますが、それぞれが力を発揮する利用シーンが異なります。
KA法|ユーザーの本音を掘り下げたいとき
KA法は、特にユーザーの深層心理や潜在的なニーズを深く掘り下げたい場合に役立ちます。例えば、以下のような場面です。
・新製品・新サービスの開発
例えば、「使いやすいアプリが欲しい」という表面的な要望の背後にある「時間を無駄にしたくない」という本質的な価値を見出すことが可能です。
・UX(ユーザー体験)の改善
ユーザーの戸惑いやストレスを意味のまとまりとして捉え、UI/UXの改善に役立つ具体的なインサイト(例:「情報量が多すぎると感じる不安」)を得ることが可能です。
このほか、感情に訴えかけるマーケティング戦略や、顧客ロイヤルティを高めるための本質的なコミュニケーションの設計にも役立ちます。
KJ法|複数の視点を統合して解決策につなげたいとき
KJ法は、多様な意見や情報をまとめ、全体像を整理したいときに適しています。例えば、以下のような場面で役立ちます。
・会議でのアイデア整理
大量のアイデアが出た場合でも、それらを分類・関係づけることで次に進む方向性を見つけやすくなります。
・課題発見の場
組織内での意見交換から課題を抽出する場面では、散らばった問題点を構造的に整理し、改善すべきプロセスを明確にできます。
・プロジェクト内での意思決定
利害関係者が多いプロジェクトでも、多角的な視点を統合しやすく、合意形成につながる整理ができます。
まとめ
ユーザー体験を向上させるためには、表面的なインタビュー結果だけでなく、KA法を活用してユーザーの本質的な価値観を掘り下げることが重要です。
UI/UX改善を成功させるために、デザインのプロフェッショナルはこれらの手法を効果的に活用しています。
Proximoでも、KA法やKJ法などさまざまな分析手法を駆使したユーザーリサーチを行い、多くの企業様のUI/UX改善をサポートしております。専門的な知識と経験を持つチームが、ビジネス課題に応じて最適なアプローチを選び、より価値のあるデジタル体験づくりをお手伝いしています。
▼ご支援実績を知りたい方はこちら
>>Proximoのご支援事例紹介ページ




