【徹底解説】ビジネスデザインで新たな価値を創造する方法
ビジネスデザインは、顧客ニーズの本質を捉え、価値ある体験として提供し、それを継続可能なビジネスとして成立させます。
この一連の仕組みを“意図的に設計する”ためのアプローチですがが、「どうやったらいいの…」と、多くの方がお悩みになられます。
今回は、ビジネスデザインの基本概念から、他手法との違い、実際のプロセス、組織への導入方法、事例、未来の可能性に至るまでを徹底解説します。
目次
ビジネスデザインの基礎を理解するための第一歩

ビジネスデザインの定義と役割とは
ビジネスデザインとは、顧客のニーズとビジネスの目的を接続し、新たな価値を創出するための思考法および実行プロセスです。
従来のビジネス手法が論理やデータ重視の分析型だったのに対し、ビジネスデザインは直感や感性、人間中心の視点を融合することで、今までにないアイデアやビジネスモデルを生み出す土台となります。
たとえば、成功するスタートアップの多くが、初期の段階から「誰のどんな課題を、どのような新しい価値で解決するのか」を明確にし、プロトタイプや顧客インタビューを繰り返しながら、柔軟に事業モデルを変化させていきます。
これはまさにビジネスデザイン的なアプローチで、アイデアを生み出すだけでなく、それを市場で成立させる仕組みまで設計することが求められるのです。
企業の戦略設計や商品開発の現場でも、ビジネスデザインは重要な役割を果たしています。
このようにして生み出された事業は、表面的なニーズではなく、深層的な欲求を捉えているため、顧客との強いつながりを築くことができます。
ビジネスデザインは、デザイン部門だけの領域ではありません。経営層からマーケティング、開発、営業に至るまで、全社的な視点で取り組むべき「戦略活動」です。
ビジネスデザインが注目される背景
なぜ今、ビジネスデザインがこれほどまでに注目されているのでしょうか。
その背景には、社会や経済の変化、そして顧客ニーズの多様化・複雑化が大きく関わっています。かつてのように製品の機能や価格だけで差別化できる時代は終わり、顧客の感情的な満足や共感を伴う価値提供が重視されるようになっています。
たとえば、同じ機能を持ったサブスクリプションサービスでも、「どのような体験が得られるか」「企業としてどのような姿勢を持っているか」によって選ばれる時代になっています。
顧客の選択基準が「モノの良し悪し」ではなく、「サービスを受ける過程での体験価値」にシフトしているのです。
これは企業にとって、より複雑な意思決定と戦略設計を必要とすることを意味します。
このような時代においては、従来のように市場分析をし、ビジネスプランを構築して製品開発に取り掛かるという直線的なモデルでは、スピードも柔軟性も足りません。市場の変化は早く、顧客の反応を見ながら柔軟に軌道修正していく必要があります。
ビジネスデザインは、このような不確実性の高い環境に適した手法として、企業の注目を集めています。
正解がない状況下で進むためには、仮説検証型の思考と、多様な視点を取り入れる姿勢が不可欠です。ビジネスデザインは、まさにそのためのフレームワークとプロセスを提供してくれるのです。
デザイン思考とビジネスデザインの違い
デザイン思考とビジネスデザインの接点と違い
現代の企業経営において、イノベーションを生み出すための方法論として注目を集める「デザイン思考」と「ビジネスデザイン」は、しばしば混同されがちです。
どちらも顧客視点を重視し、共感・観察・仮説検証を繰り返すプロセスを持つ点では共通していますが、その目的やスコープには明確な違いがあります。
この違いを理解しないまま活用を試みると、組織にとって期待した成果が得られず、プロジェクトの方向性が不明確になる可能性もあります。
まず、デザイン思考は問題発見とアイデア創出に特化した思考法です。ユーザーの潜在的なニーズを発見し、それを解決するための創造的なアイデアを導き出すことを目的としています。
一方で、ビジネスデザインはそのようなアイデアを、どのようにして事業として成立させ、継続的な価値提供に結びつけるかを設計する段階にフォーカスしています。顧客に価値を届ける仕組み(バリューチェーン)、マネタイズ方法、パートナーシップ構造、組織体制など、ビジネスとして機能するために必要な構成要素を包括的にデザインするのがビジネスデザインです。
つまり、デザイン思考が“ひらめき”の段階にフォーカスしているのに対し、ビジネスデザインは“実行と継続”の段階にまで目を向けているのです。
この違いは、導入時の関係者の巻き込み方にも影響します。
両者は、どちらか一方を選ぶべきというものではなく、むしろ相互補完的な関係にあると言えます。
デザイン思考については、以下の記事で詳細に説明しておりますので、ご覧ください。
参考記事:【完全ガイド】デザイン思考とは何か?を深掘りして実践に活かす
サービスデザインとビジネスデザインを比較

ユーザー中心視点との関係性
サービスデザインとビジネスデザインは、いずれも顧客を中心に据えた価値創造を目指すアプローチでありながら、その焦点や扱う範囲に違いがあります。
どちらも現代の企業にとって不可欠な考え方ですが、目的や成果物が異なるため、明確に使い分ける必要があります。この違いを正しく理解することは、プロジェクトの成功確率を高め、組織内での混乱を防ぐためにも重要です。
サービスデザインは、顧客体験を軸にサービス全体の設計を行う手法です。タッチポイントと呼ばれる顧客と企業が接触する場面をすべて洗い出し、サービスの受け手がどのように感じ、行動するのかを可視化したうえで、体験全体の質を高めることを目的とします。
顧客の感情や動線を深く理解し、それに応じてサービスの裏側(バックエンド)も含めて改善していくことが求められます。
一方で、ビジネスデザインは、このようなサービス全体の設計を包含しつつも、より大きな視点からビジネスそのものを構築することに重きを置いています。
つまり、サービスデザインが「顧客がどう感じるか」にフォーカスしているのに対し、ビジネスデザインは「その体験をどうやって継続的に提供し、利益を出していくか」までを設計対象としています。
収益構造、パートナーシップ、コスト構造、価値提案、顧客チャネルなど、ビジネスモデル全体を組み立てる必要があります。
重要なのは、サービスデザインとビジネスデザインのどちらを優先するかではなく、どのタイミングでどちらを適用するかを見極めることです。
ビジネスデザインに欠かせないプロセスを知る
調査と仮説設計のフェーズ
ビジネスデザインの最初のステップは、ユーザーの行動や心理、文脈を深く理解するためのリサーチと、そこから導かれる仮説の設計です。
この段階は、すべてのプロセスの土台となるため、非常に重要です。顧客や市場に対する理解が曖昧なまま次のフェーズに進むと、的外れな戦略やプロダクト開発につながり、時間とコストの大きなロスを招くことになります。
まず取り組むべきは、顧客の「声」を徹底的に拾い上げることです。
これは単なるアンケート調査や統計分析ではなく、フィールドリサーチやデプスインタビューといった定性的なアプローチを含みます。
顧客がなぜその行動を取るのか、何に困っていて、どんな感情を抱いているのか。
その背景にある生活のリズムや社会的環境まで含めて洞察することが求められます。
このプロセスでは、「事業者が思う価値」と「顧客が感じる価値」のギャップを埋めることが大きな目的となります。
ビジネス側の論理だけでプロダクトを設計すると、使われない・買われない商品ができあがってしまいます。反対に、顧客の声ばかりに引っ張られて収益性を無視すれば、持続可能な事業にはなりません。このバランスをとる出発点が、調査と仮説設計なのです。
効果的な仮説構築のためには、調査データの分析だけでなく、チーム内での議論や仮説共有も重要な工程です。
多様な視点から意見を出し合うことで、見落としていた視点や新たな切り口が生まれることもあります。
そして、その仮説が明確になれば、次のアイデア創出フェーズへとスムーズに進むことができ、プロジェクト全体の精度を高めることにつながります。
アイデア創出とコンセプトの構築
仮説をもとに、次に行うべきは具体的なアイデアの創出と、それを一貫したコンセプトへとまとめ上げる工程です。
このプロセスでは、発散と収束を繰り返しながら、単なる思いつきではなく、価値の核をもった実現可能なアイデアを形成していきます。
ここで重要なのは、「新しさ」や「奇抜さ」だけを追求するのではなく、ユーザーの課題と文脈に対して“深く刺さる”本質的な価値を抽出することです。
最初のステップは、アイデアの発散です。ブレインストーミングやマインドマップなどの手法を使って、仮説に基づく課題に対して多角的にアプローチします。
ここでは「正解」を探すのではなく、自由な発想を尊重し、なるべく多くのアイデアを出すことが目的です。
続いて行うのが収束のフェーズです。
発散したアイデア群から、実行可能性・市場性・共感性の観点で評価し、最も有望な案を絞り込んでいきます。
この際には、ペルソナやカスタマージャーニーマップなどを用いて、アイデアがユーザーの体験にどのように貢献するかを具体的に可視化することが効果的です。
そして、選定されたアイデアを、ユーザーへの提供価値として一つの「コンセプト」にまとめ上げます。
ここでは「誰に・何を・どのように提供するのか」を明確に言語化し、関係者が共通理解できるかどうかがポイントです。
この段階まで来ると、単なるアイデアが現実の事業モデルとして動き出す準備が整います。
アイデアを「点」で終わらせず、ユーザー価値とビジネス価値を融合させた「線」や「面」に展開していく視点が、ここでは最も重要となります。
実際の開発にどうビジネスデザインを活かすか
プロトタイピングから市場テストまでの流れ
ビジネスデザインを現場で実行に移すうえで最も重要なのが、「プロトタイピング」と「市場テスト」のプロセスです。
アイデアやコンセプトを机上の空論で終わらせず、ユーザーと市場のリアルな反応をもとに改善を繰り返すこの工程は、事業の成否を大きく左右するカギとなります。
特に近年のように市場環境が日々変化する中では、早い段階で検証を行い、柔軟に軌道修正できる体制が不可欠です。
まずプロトタイピングとは、仮説に基づいたアイデアを、実際に触れる・使える形で具現化することを指します。
これは必ずしも完成された製品である必要はなく、紙に描かれたスケッチや簡易なデジタルモックアップなど、ユーザーが操作感や構造を理解できる程度のもので十分です。
重要なのは、チーム内だけで完結せず、ターゲットとなる顧客に触れてもらい、率直なフィードバックを受け取ることです。
プロトタイプから得られた反応や改善点をもとに、次のステップは「市場テスト」に移行します。
市場テストでは、一定数の実ユーザーを対象に、実際の使用状況を観察・記録し、プロダクトの使い勝手、価値提案の伝わり方、継続利用の可能性などを検証します。
このフェーズは、事業として成立するかどうかを見極める重要な判断材料となるため、評価指標をあらかじめ設定しておくことが重要です。
また、このフェーズではユーザーとのインタビューやアンケートも同時に実施することで、定量データでは捉えきれない感情や行動の裏側を理解することができます。
実際に多くの企業では、「Aという機能が好評だと思っていたが、実はBの方が利用されていた」「価格ではなく、サポート体制に安心感を持って購入を決めていた」といった予想外の気づきを得ています。
このプロセスを効果的に実行するためには、失敗を恐れずに素早く動く文化、そしてチーム内での透明なコミュニケーションが欠かせません。
ビジネスデザインの社内導入のポイントとは

チーム体制とカルチャーづくりの重要性
ビジネスデザインを社内に導入する際に最も重要となるのは、「プロセスの導入」そのものよりも、「それを支えるチーム体制」と「組織文化(カルチャー)」の整備です。
優れたフレームワークやツールがあっても、それを活かせる人材や環境がなければ、成果につながることはありません。むしろ中途半端な導入によって現場が混乱し、既存の業務との摩擦が生まれてしまうケースも少なくありません。
まずチーム体制についてですが、ビジネスデザインを推進するには、単一部門や一部のプロジェクトチームだけで取り組むのではなく、組織横断での協働体制が求められます。
これは、ビジネスデザインが「価値提供の全体構造」を対象とするためです。マーケティング、開発、営業、カスタマーサポート、経営企画など、各部門が連携しながら、顧客価値の実現に向けて一体となる必要があります。
次に、カルチャーの観点です。ビジネスデザインは、必ずしも初めから成功するわけではなく、仮説と検証を繰り返しながら磨き上げていくプロセスです。
つまり、試行錯誤や失敗を許容する組織文化がなければ、社員はリスクを恐れて行動できず、せっかくのデザイン活動が形骸化してしまいます。
そのためには、経営層からの積極的なコミットメントと、「失敗しても学びにつなげる」という姿勢の明示が求められます。
つまり、ビジネスデザインは「商品を変える」のみならず、「組織そのものを変える力」も持っているのです。
このように、ビジネスデザインの導入は単なる手法の導入ではなく、「組織の在り方」そのものを問い直す行為でもあります。
形式的に導入するのではなく、組織全体がその価値を理解し、実践し続ける環境を整えることこそが、真の成果を生み出す第一歩となるのです。
Proximoでは、プロダクト改善やブランディング向上に向けてII/UXデザイントレーニングで、内製化をはかる研修を行っております。
研修イメージは、以下です。
・基礎研修
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まとめ
ビジネスの成功において、優れたアイデアや商品力だけではもはや十分ではありません。
変化し続ける市場、複雑化する顧客ニーズ、そして不確実性が高まる時代において、企業が持続的に成長し続けるためには、価値創造の仕組みそのものを「デザイン」する視点が不可欠です。
まさにその答えが、ビジネスデザインというアプローチの中に存在します。
今回の記事では、ビジネスデザインの定義やその違い、具体的なプロセスなどを幅広く解説してきました。
実際に取り組む際には、最初から完璧を目指す必要はありません。むしろ、部分的でもいいので小さな一歩から始めることが大切です。
小さな一歩から始めることこそが、組織の競争優位を強化し、未来に対する耐久力を持つことへとつながるのです。
これからの時代、どれだけスピーディーに市場に対応できるか、どれだけ顧客の期待を超える体験を提供できるかが、企業の価値を決定づけます。
そしてそのために最も有効な手段こそが、ビジネスデザインです。それは単なる方法論ではなく、未来に向けて変化し続ける“組織の姿勢”であり“文化”でもあります。
だからこそ、今日から始めてみましょう。
ビジネスデザインを実践することで、自社の未来は必ず変えていけます。その第一歩を、今この瞬間から踏み出してみてください。
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